展覧会
第49回「日本の書展茨城展」
◆会期
 令和4年4月9日(土)〜4月14日(木)午前9時〜午後5時(最終日は午後2時で終了)

◆会場
 ザ・ヒロサワシティ会館(県民文化センター)展示室、県民ギャラリー(水戸市千波町)

◇後援
 県、県教育委員会、NHK水戸放送局、文化庁、共同通信社、全国書美術振興会

◇問い合わせ
 茨城新聞社営業局事業部 TEL029(239)3005



奨励賞受賞者の横顔
 第49回日本の書展茨城展(茨城書道美術振興会、茨城新聞社主催)の奨励賞受賞者10人が決まった。それぞれの横顔を紹介する。(順不同)

中村裕美子さん 水戸市 空間のバランス配慮
 初の受賞に「思いがけず驚いた。試みが評価されてうれしい」と喜ぶ。作品は万葉集の5首を朱色の紙に書いたもので、受賞作が初めての作。墨の量、潤滑さ、文字の流動性に細心の注意を払い、空間のバランスにも気を配った。「朱色の上では濃淡の幅が狭くなり難しさを感じたが、賞を励みに探究を続けたい」と自信を深めた。
中村裕美子さん(水戸市)
西野香葉さん ひたちなか市 表現力の向上に意欲
 2度目の奨励賞。李白の詩の一部を作品にし、春の穏やかな情景を表現した。「とてもうれしい反面、賞の重みも感じる。恥ずかしくないように表現力をもっと磨きたい」と語る。書暦は小学1年から。60代の現在も主婦業の傍ら、時間を見つけて毎日書いている。「没頭できる良さがある。今後も自分のペースで書き続けたい」
西野香葉さん(ひたちなか市)
中尾慧雪さん 筑西市 墨量多め文字に流れ
 中国明代の詩人、高青邱(こうせいきゅう)の作品をしたためた。「墨量を多めにすることを心がけ、文字の流れを意識した」。趣味として20代で始めた書は、今では「生活の中心にある」。書への思いを同じくする書游会(しょゆうかい)の仲間との会話が励みだ。「少しでもいい作品が書けるように、牛歩のごとくであっても、努力していきたい」
中尾慧雪さん(筑西市)
坂本蘭香さん 結城市 淡々と「調和体」挑む
 8歳から書に親しむ。2015年に続き2度目の受賞に「うれしいし、励みになる」と語る。今展では漢字に平仮名交じりの「調和体」に挑み、北宋の書家、米芾(べいふつ)の書を3行書きでまとめた。文字の形や強弱、余白のバランスなどを見ながら仕上げたポイントは「力まずゆっくり、淡々と」。日頃の研さんが新たな境地に導いた。
坂本蘭香さん(結城市)
中田寶雲さん 神栖市 余白で懐の深さ出す
 受賞作は、北宋の文豪、蘇東坡(そとうば)の詩2首を4行でつづった。「墨付きを意識した上で、文字の偏とつくりの間といった余白で懐の深さを出すようにした」。全体のバランスを取ることや大きな動きを出す難しさはあるが、だからこそ「面白い」と感じている。「書が好きな気持ちを大切に、日々精進していきたい」
中田寶雲さん(神栖市)
津﨑麗江さん 牛久市 左右の広がりを意識
 「先生方や仲間に導かれ、思いがけない世界を見せてもらった」と書との出合いに感謝する。受賞は2度目。中国清代の袁枚(えんばい)の詩を題材に、横の紙を生かし行書体で仕上げた。改行が多く、左右の広がりを意識しながら変化を持たせ、力強い線を心がけた。「自分と同じように書いている仲間に思いをはせ、励まされている」という。
津﨑麗江さん(牛久市)
鈴木赤鳳さん 水戸市 墨線の強さに心砕く
 書は子どもの頃から習っていたが、本格的に取り組んだのは30代から。「信じられない気持ちです」と受賞を喜ぶ。中国唐代の詩人、李白や王維(おうい)が好きで、受賞作も流動感あふれる行草体で李白の詩を書いた。「墨線の強さを出すことに心を砕いたが、見直すと反省点が目に付く。受賞をきっかけにさらに勉強に励みたい」
鈴木赤鳳さん(水戸市)
一ノ瀬利風さん 日立市 力強い文字で元気に
 「新型コロナ禍なので『力強い文字を見て、元気になってほしい』という気持ちを込めた」。受賞作の隷書は、後漢時代の隷書体を基盤にし、心に秘めた思いを表現した。書暦は約18年。「ずっと地道に書いてきた。評価されてうれしい」と喜ぶ。今後は「健康でいられる限り、できるところまで書を続けたい」。
一ノ瀬利風さん(日立市)
秋山博華さん 古河市 世相を反映 渾身の作
 いにしえからの言葉を刻む「篆刻(てんこく)」に魅せられ15年。新型コロナや戦争による脅威や恐怖とともに、それらをはねのけようとする勢いや力を「滔天勢(とうてんのいきおい)」の3文字に込めた。篆刻は奥が深く、「中国史や漢文の意味、出来事へと関心が広がり、知識の誘いに応じて入り込んだ」と例える。世相を反映した渾身(こんしん)の作に満足している。
秋山博華さん(古河市)
石川楽堂さん 桜川市 バランスや構成 腐心
 「思ってもみなかった。びっくりした」と言うが、2度目の奨励賞が力量を示す。高校時代の書道部がスタート。以来古典の臨書を中心に続けてきた。作品は、人生の苦難が人を磨き成長させるという禅の言葉「雨洗風磨(うせんふうま)」。木簡を基に文字のバランス、構成に腐心した。これからは「独自の作品づくりに精進する」と思い定める。
石川楽堂さん(桜川市)